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今日の論理学:リンデンバウムの補助定理の証明

これまでの流れのおさらい

  • 公理系APLの完全性を証明したい
    • ヘンキンの定理を証明する必要がある
      • 【補助定理44-1 リンデンバウムの補助定理(Lindenbaum's lemma)】
      • 【補助定理44-2 極大無矛盾集合の充足可能性補助定理】→これは次回やる

今日はリンデンバウムの補助定理の証明をなぞる

【補助定理44-1 リンデンバウムの補助定理(Lindenbaum's lemma)】
Γが構文論的に無矛盾な式の集合である時、Γを部分集合とするような極大無矛盾集合Γ*が少なくとも1つ存在する

論理学をつくる

論理学をつくる

証明概略

  • 任意の無矛盾な式集合Γのスーパーセットになる極大無矛盾集合Γ*をつくる方法を示す
  • その手順で作ったΓ*が極大無矛盾集合になっていることを示す

ΓをΓ*に拡張する方法

  • 任意の論理式の集合は枚挙可能である。
    • 自然数の番号をつけて一列に並べることができる
  • 全ての論理式を枚挙した列が与えられているとする
  • 無矛盾なΓに対して、矛盾しないならΓ*の要素として付け加えるという操作を続ける。

手順

式集合の系列Γ01,...をつくる

  • (1)Γ0 = Γ
  • (2) Aiを枚挙した論理式のi番目の要素とする
    • Γi∪{Ai}が無矛盾の場合
      • Γi+i = Γi∪{Ai}
    • Γi∪{Ai}が無矛盾で無い場合
      • Γi+i = Γi
  • (3) 上記手順を無限回繰り返した集合Γ* = ∪i=0Γiを極大無矛盾集合とする。

上記の操作で作成した式集合Γ*は以下の要素を満たしている。

  • 系列Γ01...に現れる式を全て含む
  • Γ∈Γ*である

Γ*が極大無矛盾集合であることの証明

Γ*が極大無矛盾集合であることを証明するためには以下の2つの証明が必要である

  • (1)構文論的に無矛盾であることの証明
  • (2)極大であることの証明

(1)構文論的に無矛盾であることの証明

  • 前半:数学的帰納法を用いて、Γ01...に現れる任意のΓnが構文論的に無矛盾であることを示す。
  • 後半:Γ01...が構文論的に無矛盾である時,Γ* = ∪i=0Γiも無矛盾であることを示す
前半
  • 前半:数学的帰納法を用いて、Γ01...に現れる任意のΓnが構文論的に無矛盾であることを示す。

  • [Basis] Γ0は無矛盾と仮定したΓであるため(Γ0=Γ)無矛盾である

  • [Induction step] Γk+1より前にある全ての集合が無矛盾であると仮定する
    • この時、Γk+1も無矛盾であることを示す。
      • 定義よりΓk+1は以下のどちらかとなる
        • 1.Γk∪{Ak}
        • 2.Γk
      • Akを加えても矛盾しない場合のみΓk+1は前者になるので、1は無矛盾である。
      • 2は帰納法の仮定により無矛盾である■
後半
  • 後半:Γ01...が構文論的に無矛盾である時,Γ* = ∪i=0Γiも無矛盾であることを示す
  • 次の補助定理を使う

【補助定理44-1】論理式の集合Γが構文論的に矛盾している時、Γの何らかの有限部分集合が構文論的に矛盾している(証明略)

  • Γ*が矛盾している時Γ*に矛盾している部分集合Γ'が存在する
  • Γ'野中の最も大きい番号の式をAjとする
    • Γ'に含まれる式はΓj+1に含まれている
      • Γj+1は矛盾しているΓ'を含むため、これもまた矛盾している
        • これはΓ01...に現れる任意のΓnが構文論的に無矛盾という前半と矛盾する■

note:本書中では「前半と矛盾する」、という書き方ではなく「仮定に反する」と書かれているが、その仮定はどこにもないので、「前半」の間違いだと思う。

これは、系列Γ0,Γ1,...のあらゆる要素が無矛盾であるという仮定に反する。■(p271)

(2)極大であることの証明

背理法を使う。

  • 背理法の仮定:Γ*が無矛盾だが極大ではないとする
    • 上記の仮定でΓ*∪{Aj}を無矛盾とするAjΓ*が存在する
      • "矛盾した集合を含む集合は全て矛盾している"
        • 上記の対偶は"無矛盾な集合の部分集合は全て無矛盾である"
        • Γj∪{Aj}はΓ*∪{Aj}の部分集合である
          • Γ*∪{Aj}が無矛盾ならばΓj∪{Aj}も無矛盾
            • とするとΓ*の構成ルールよりΓj+1j∪{AJ}
            • Aj∈Γj+1よりAjΓ*
              • これは仮定に反するので背理法の仮定は矛盾
              • よってΓ*∪{Aj}が無矛盾かつAjΓ*となるAjは存在しない
              • つまりΓ*は付け加えても無矛盾性を保つ式は全て含んでいる=Γ*は極大■

次回

次回は【補助定理44-2 極大無矛盾集合の充足可能性補助定理】を証明します。

これにより

  • ヘンキンの定理が証明される
  • 公理系APLの完全性が証明される

というドミノ倒し的なことが起こるはず。そして公理系を証明すると、この本の古典論理学パートはおしまいです。